笑いながら見てた実況者の本で感動する日が来るなんて思ってなかったよ。
ちょうど自分が大学生だった2005年〜2008年くらいのころ、「ゲーム実況」というジャンルが誕生していました。「もともとゲームセンターCX」が好きだったこともあり、「ゲーム実況を視聴しつつ何かする」ことが日常になっていきました。大学生活を彩ってくれたゲーム実況、当時更新を心待ちにしていた実況者の一人が、今回膵臓を爆発させたたろちん氏です。
当時から酒を飲んでベロベロになりながら実況してますね。
ゲーム実況黎明期に活躍した投稿者、その後は何をしてるんだろうという話ですが、そのままYouTubeに渡って活動を継続している人もいれば、別分野で活動される方もいます。たろちん氏は当時から文才があって面白い文章を書いている方だなと思っていたら、ゲーム実況もしつつ、いつのまにかライターとして活躍されていました。すごい。
そんなたろちん氏が何かヤバいことになっていると知ったのが2022年、急性膵炎になっていたとのことで、まああんな飲み方してたらそうなるよなあ…と思っていたのですが、どうやらことはもっと深刻だったというのがこの本の内容です(急性膵炎ではなくて、「重症」急性膵炎)。まじでいつ亡くなられていてもおかしくなかった状況だったようで、本当に生きて活動再開できて何よりです。本書は4ヶ月半にも及んだたろちん氏の入院生活と、ゲーム実況者「たろちん」が誕生するまでの前半生、そして退院してからも続く人生のお話です。
当たり前ですが生きている限り、病気から生還しても人生は続きます。入院生活の結果、たろちん氏と妻のいみちん氏が背負ったものは重く、コミカルな描写とは裏腹に相当大変だったんだな、というのが伝わってきます。人間はいつ死ぬかわからない、会える人には会えるうちに感謝を伝えておいたほうが良い…。あのころ腹を抱えて笑っていたゲーム実況者からそんな感情をもらうことのなるなんて思ってもいませんでした、生きててくれてありがとう、たろちん。
うっすらとした意識の中で妻や友人や家族のことを思い浮かべて「ありがとうって言いたいな」「このまま会えなくなってもずっと元気で過ごしてほしいな」ということを思っていました。 みんながみんなそうなのかはわかりません。でもそういう風に思いながら、伝えられずに亡くなってしまった人もきっといると思います。 あの世にほぼ逝きかけた人間として、僕がかわりに「ありがとう」を伝えさせてください。そういう気持ちが生きている人に少しでも伝わってくれるといいなと思っています。
