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『神になりたかった男 回想の父・大川隆法』

幸福の科学の総帥である大川隆法の長男、大川宏洋氏から見た「人間」大川隆法のお話。

自分は正直「幸福の科学」という新興宗教についてはネタとしてしか認識していません(問題が多い教団だとは思っています)。「エル・カンターレ大川隆法のトンデモファッションや意味不明な教義、どう見ても当選できるわけもないのにいきなり政党を作る突飛さ。「なんでこんなメチャクチャなことができるんだろう」「普通に考えたらそんな都合のいい発想にはならんやん」と思っていたので、「どこまでこいつら本気なんだろう」と不思議でした。実子である大川宏洋氏の目線で語られる大川隆法のエピソードを通して、教団の暴走がどうして起こっていたのかが語られます。

と言っても教団の暴走が起こる原因は多くの人が考えていたであろうことで、大川隆法以外の人間はダメだろと思っていたことでもエル・カンターレの言うことは絶対なのでやらざるを得ずに頓珍漢な方向に突っ走ってしまう、反対する人は遠ざけられるため、余計におかしなことになってしまう悪循環にハマってしまうだけのことです。その辺は不思議なところはありません。

さて、「教祖の息子」、しかも教団と絶縁し、裁判にまでなっている大川宏洋氏は父親のことをどう見ていたのでしょうか?「小さい頃はマトモな父親だった」…とかそういうことはもちろんなく、概ねヤバい人間という印象しか残っていないようです。養育環境にしてもかなり歪なものだったようで、親ガチャという言葉にぴったりの状況で、教祖の息子なんて碌なもんじゃねえなと強く思わせてくれます(母親との関係性とか)。

大川宏洋氏によれば、大川隆法の初期の著作からはまだ「自分を客観視する能力」が残っていた、と言います。大川隆法は地方から上京して東京大学に入学し、その後紆余曲折を経て専門商社に入社しますが、お世辞にもリア充とは言えない、冴えない一般市民だったようです。それが1980年代オカルトブームにも乗って教団はあれよあれよという間に急拡大。非モテのイケてないサラリーマンだった彼が俄かにモテモテになり、周りにイエスマンばかりを置くようになり、徐々に自分を客観視する能力が失われていったのだと言います。この辺の話は普通に我々にも当てはまりそうでドキリとさせられます。

大川隆法自身の視点から見ればそれは、冴えない生活を送っていた主人公が努力の果てに一発逆転してハーレムエンドを達成したという、なろう小説もびっくりのサクセスストーリーと言えるのかもしれません。これ以上ないハッピーエンドでしょう、本人の視点から見れば、ですが。

エル・カンターレ大川隆法は結局、新型コロナウイルス感染症と思われる病気により、急死しました。本人が満足して死んだのかどうか、それは誰にもわかりません。