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『FX戦士くるみちゃん』のお母さんはどうすれば助かったのか

現在(2024年9月時点)、スイスフランショック編で大変なことになっている『FX戦士くるみちゃん』ですが、今連載中の展開って元々あった原作の先に進んでる話なんですよね。原作については以前ちょろっと書いたことがあります。

元々自分は絵柄の好みもあり、くるみちゃんは原作版の方が話がエグくて面白いと思っていたんですが、今の流れは連載版の方が面白いですね。強烈なエピソードはリアルタイム進行中のスイスフランショック編もそうなんですが、くるみちゃんがFXを始めるきっかけになった「母がFXで家の金2000万円を溶かして自殺した」事件が掘り下げられてて、これがキツい。すでにアンハッピーエンドが確定している話なんですが、彼女がどのような経緯でFXを始めたか、そして破滅していったかが迫真の筆致で描写されます。

ただ、幸せになりたかった

くるみちゃんの母親は専業主婦で、旦那の郁夫さんは単身赴任中。くるみちゃんが成長して手がかからなくなってきたので家計の足しになればと始めたのがFXでした。

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彼女がFXを始めた時に流行だった「円キャリートレード」。円キャリートレードとは、↓のような手法です。

金利通貨である円で借り入れをして高金利国の金融資産等で運用し、運用益に加えて金利の利ざやを獲得しようとする取引SMBC日興證券「初めてでもわかりやすい用語集」より

つまり、金利の高い通貨を購入して金利の利ざや(スワップポイント)を獲得することで、株式投資でいう配当金を得ようとするやり方です。当時人気だった手法であることに加え、彼女はそもそも1発ドカンとかせいでやろうとFXを始めたわけではありません。「ちょっと豊かな暮らしを目指して」FXの世界に足を踏み入れたのです。

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破滅への道

結果を見るとすぐに破滅したのかなと思いがちですが、意外にも彼女のFXは当初、うまくいっていたようです。作中の描写を見るとスタートが2006年6月、そして破綻に向けて大きく動き出すのが2008年7月です。実は2年間もの間、順調だったんですよね。広い庭付きのマイホーム、ふたりめの子供、ペットにはシェルティー…。彼女の夢は大きく膨らんでいきます。でも、そうはならなかった、ならなかったんだよ、ロック。

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豪ドルが90円まで下がってきたことを「チャンス」とみなして一気に買い込むお母さん。レバレッジを何倍にしてポジションを持ったのかは不明ですが…。

彼女の予想に反して豪ドルはその後も下落を続けます。なんとか家のお金を入れて耐える日々でしたが下落は止まらず、ついに手をつけてはいけないお金(保険の解約、マイホームの頭金、実家のお金…)にまで手をつけてしまいます。結果は…。

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その後お母さんは壊滅的な敗北を取り返そうと奮闘しますが、当然勝てるわけもなく、さらなる泥沼に陥っていきます。

彼女のFXトレード日誌の最後のページ。

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最後の日が記された2008年10月23日の翌日、2008年10月24日が『FX戦士くるみちゃん』第1話の回想シーンに繋がります。

彼女はどうすればよかったのか

当時の豪ドルのチャートを振り返ってみるとこんな↓感じでした。豪ドルはこの時、最終的に54円台まで下がったので、後付けですが、90円台で大量買いをしたお母さんは何をどう足掻いても助かることはなかったのです。

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FXをしなければよかった?それはそうですが、勝っていた結末もあり得た場面なので、やはり根本的には「家族にきちんと相談すべきだった」ということになるのでしょう。とても相談できることではなかったのはその通りなんですが、それでも彼女はそうするべきだったのです。

スイスフランショックをくらっているくるみちゃんも、このままでは母と同じ道を辿ることになってしまいます。FX戦士くるみちゃんは果たしてどうなるのか?見守りましょう。